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July 30 アルバニ山の木の実 [アルバニ山 Albany Hill]

July 30, 2008 (Wednesday)

    モーリちゃんのサマースクールは終わったが、モーリちゃんの母のアダルトスクールはこの日までだったので、そのあいだの数日間モーリちゃんの父がモーリちゃんと留守番をすることになっていた。前の週末にサンパブロ通りの八百屋さんの隣りのイチバンカン(サンフランシスコのジャパンタウンにも店がある、百円ショップみたいな感じの店) で、一組1.5ドルのバドミントンを2セット買ったので、毎日のようにモーリちゃんとモーリちゃんの父はバドミントンをしていた。

   この日も昼前から山の下の公園(通称山下公園w)で バドミントンをしていたのだけれど、途中で「ちょっと休憩」とモーリちゃんが鉄のベンチに寝っ転がって、「おとうさんも」というのでふたりして空を見上げて寝そべった。

   そのあと公園の芝生のなかのクローバーを探したり、 木の実や落ち葉を観察したりした。モーリちゃんは前からいろいろな色の実が気になっていたようだが、モーリちゃんの父は地面をじっくり見るのは初めてだった。アルバニ山を彷徨したときにさえよくは見ていなかったのです。それから、山にちょっと行ってみようということで、山へ出た、というか山へ入った。虫がはいっていたらいやだなあ、とは思ったが、とにかく持ち帰って、インターネットで調べてみようということで、持ち帰って撮影したのが次の写真です。――

 albanyhill,CA_Summer2008_DSC_0042.jpg

(クリックでちょっぴり拡大)

右下の赤いサヤには黒い豆状の実が入っていて、その木の葉っぱは右下の緑の葉です。左上のオレンジ色の実はこのまま地面に落ちていました。 以上は公園に生えていた木ですけど、公園の中の山のそばに、そして山の中にたくさん落ちていた実の多くは左側に並べたベーゴマ状の実です。大きさはまちまちですが、2cmくらいのものが多く、円錐の部分の色は白から緑、茶色、上の丸い部分は、十字型の切れ目が実際に凹状に穴が開いている場合と、赤やオレンジの手裏剣状の模様になっているのとあり(前者のほうが古い感じで、色も茶色い)。円錐の部分の皮が剥けて、繊維状の木質があらわになっているのもありました。あと、数は少ないけれど、どんぐりの帽子の部分だけ見つかりました。

<!--[if gte mso 9]-->  昼に家に戻って調べてみると、アルバニ山の植生について、市のホームページはつぎのように説明していました。――

 

The park is open space except for the pleasant eucalyptus tree lined rustic trail.  The natural value of Albany Hill lies in the surprising richness of the flora and faunas [sic.] the current tally is 134 native plants reported from hill and creek, including 2 orchids, 3 different roses, and 7 kinds of fern.  Many of these plants were of great importance to the local Ohlone tribes whose grinding holes remain in the bedrock, such as coast live oak (Quercus agrifolia), California hazelnut (Corylus cornuta var. californica), soap plant (Chlorogalum pomeridianum), and yarrow (Achillea millefolium).Albany Hill

   eucalyptus tree って、ユーカリではないすか。調べてみると、ユーカリはコアラの国の木ですけれど、何百種類もあって、そのなかで近年は紙パルプの資源として背が高く伸びるタイプが地球のあちこちに輸出されて植林が進められているようです。そういう最近のこととしては、日本版ウィキペディアの「ユーカリ」にリンクされている「ユーカリ植林と環境問題」というessayがそのへんの事情と問題点(とされたものの問題ではないという反論)をくわしく述べて、興味深かったです。

 

  増大する紙パルプ需要に応え、再生可能な資源として期待されるのが、亜熱帯を中心とする成育の早い樹種による植林木である。中でも最も有望な早生樹種として着目されているのが、ユーカリである。これまで多くの造林技術の知識の蓄積があって、製品の市場が確立しているためである。

  ユーカリは、著しく生長が早く、多岐な種類の中から、あるいは同一種の中でも産地の違いで、植えようとする土地の気温や降雨量、土壌などの条件に合った樹種を 選択することができる。荒廃地等劣悪な土地でも、適応力が強いので、造林適地がきわめて広い。他の早生樹に比べて、樹種の選定や植え方、管理態勢次第では、単純一斉林とした場合でも病虫害の発生が少なく、山火事にも比較的耐える力があり、また種子の採取、保存と挿し木苗の養成が容易で、大量に苗木を生産 できるばかりでなく、根からある程度以上のところで切れば、切り株から芽が出て再成長し、再植の手間が省けるという特性がある。利用材積が大きく、ヘクタールあたりの林分材積は成長量の早いこととあわせ高いものになる。用途は紙パルプ原料のほか、薪炭材、電柱、鉄道枕木、坑木、合板、建築材・家具材など に使える。そのほか油成分等から塗料や香油、化粧品、消毒剤の原料が抽出できるなど、木材資源としての有用性が広い。

  このためユーカリ植林は、アジア、大洋州、中南米、アフリカ、地中海周辺、北米など、世界の多くの地域で広く行われている。熱帯地方の人工林の中では、松、アカシア、チークをはるかに上回る面積が、ユーカリによって占められている。特にブラジルでは、ほとんどの州で植えられ、現在ユーカリの植林面積はおよそ 300万ヘクタール、国土の0.35%に相当し、いまやブラジルは、世界最大のユーカリ植林国である

と ころが、近年ユーカリ植林について、様々な批判がいわれるようになった。その多くは土地所有や利用に関わる住民政策の問題、ユーカリ材の生産・流通・消費構造等に起因する社会・経済的問題であるが、ユーカリ類の生態的特性が有害であると指摘したものがあって、ユーカリ類の造林はいかなる状況下でも好ましく ないとの主張がなされている。例えば、土壌の養分の消費量が大きく、短い期間で伐採を繰り返せば、土壌の劣化を招く、ユーカリは、土壌水分を多く吸収し蒸散させ、水を大量に消費し、水源機能を低下させる、外来樹種の一斉造林は、動植物の生育環境、生態系の多様性に問題を生じる、ある種のユーカリ葉 の出す化学物資が、他の生物に悪影響を与える、といった非難である。

  カリフォルニア、少なくともベイエリアのこの地域に最初にユーカリが植えられたのは、どうやら1850年代のようです。時代背景としてはゴールドラッシュが関わっていて、よその土地からやってきた人たちが焚き木をするにもあんまり木が生えていなかったのが事実らしい。英語版Wikipedia の "Eucalyptus" にリンクされている、カリフォルニア州立大学のRobert L. Santos という人のessay "The Eucalyptus of California: Seedsof Good or Seeds of Evil?" があれこれと蘊蓄を傾けていますが、全部読んでいるひまないよ、というくらいの蘊蓄の傾け方なので、歴史的なところをぱらぱら読むと、オーストラリアから黄金の夢に駆り立てられてやってきた人がその夢のかわりに植林を商売としたという説とかいろいろあるようですが、事実として十数種類のユーカリの記述のあ る1850年代の商品カタログが残っているそうです。諸説の一部も入れて引用します。――

 

   Looking for real hard evidence, H.M. Butterfield did find in1935 an 1858-1859 Golden Gate Nursery Catalog at the Academy of Sciences in Golden Gate Park. It listed eucalyptus species as follows:


      Eucalyptus Resinfera (Aus.)-- Splendid weeping forest tree. 60 feet. $10.00 〔これは俗に"Australian red mahogany" と呼ばれる種類のようです〕
 
    " Argentea " --  Argentea foliage 20 feet.  $10.00
 
    "  Augustifolia "  --  dwarf 5 feet           $  5.00 〔dwarf というのは矮性の、最初から低い種類です〕

    Also noted in the catalog is a list of seeds received from M. Guilfoyle of Sydney, September 15, 1859. These species were robusta, iron bark, blue gum, longifolia, nigra, and globosa (globulus?). 
    Maybe it was Captain Robert H. Waterman who planted the first eucalyptus seeds in California?  In a biography of this clipper ship captain, entitled That Fabulous Captain, one finds that Waterman bought land in Suisun Valley for his retirement and planted eucalyptus in 1853. He apparently commissioned an ex-first mate to bring eucalyptus seed to him from Australia. Waterman not only planted seed on his ranch, he gave some to his neighbors as well. The blue gums currently in the area are felt to be connected with these early plantings.  
    Professor Woodbridge Metcalf, one time Forester for the University of California, Berkeley, and an expert on California eucalyptus, felt from his research that the first eucalyptus in California appeared at Oakland's Shellmound Nurseries and Fruit Gardens in 1856.  Metcalf gives no evidence to support his claim, but H.M. Butterfield, writing in 1939, notes that the nursery did have eucalyptus seedlings listed in its stock in 1856 for $5 each.44 The owner of the nursery was R.W. Washburn, and from the evidence, one can conclude that he was one of the pioneers in the propagation of eucalyptus in California. Still another challenge comes from Abbot Kinney, who wrote in 1895, " The planting of trees of various species of Eucalyptus in California has been carried on since January 1856, when Mr. C.L. Reimer successfully introduced 14 species."  Kinney, an important figure in California eucalyptus history, does not continue the story of this account in his work. Without evidence from Kinney or other writers, it is difficult to support this claim though one would like to because of Kinney's importance to eucalyptology.
 
   Taking into consideration all of these accounts and evidence, one seems to conclude that Behr and Walker were probably the first to propagate eucalyptus in California.  One can state, however, without question, that there were indeed eucalyptus pioneers on both sides of San Francisco Bay in the 1850's.

 

   さて、いろんな種類があるとして、どれか、ということで、Virginia Tech "Tree Fact Sheets" というデータベースがおもしろかったです。 検索の左側の欄が上から "Family" "Genus" "species" "common name"。右側が "State"  "Hardiness Zone"  "Floristic Region (Biome)" 〔砂漠とか熱帯サヴァンナとか〕となっていて、適当に空所に入れると該当する植物が出てきます。"Genus" eucalyptus を入れて、アメリカでは10種、カリフォルニアにしぼると6種ヒットします。1.Eucalyptus camaldulensis - river red gum 2.Eucalyptus cladocalyx - sugar gum  3.Eucalyptus globulus - blue gum  4. Eucalyptus polyanthemos - silver dollar gum  5.Eucalyptus sideroxylon - red ironbark  6.Eucalyptus torelliana - cadagi見比べると、3つ目の "Eucalyptus globulus" つまり"blue gum"と呼ばれるものがアルバニ山に見られるものだとわかりました。

  あらためて検索すると、英語版Wikipediaには "Eucalyptus globulus" が別だてで記事になっており、細部の画像も豊富に付いているのでした。

   Image: Eucalyptus globulus fruit

      Image: Eucalyptus globulus fruit 3-6valves 

   Image:Eucalyptus globulus bud

      Image: Eucalyptus globulus bark

    アルバニー市のページには、土着(native) の植物としていくつかあがっていましたが、どんぐりみたいなのは coast live oak というカシの種類のようです(モノの本によると常緑樹evergreenの場合はカシ、落葉deciduous の 場合はナラだそうで)。これはある程度の塩分のある土地でも生え、カリフォルニア沿岸に昔からある木だそうです。高さ1025メートル。樹齢が200年を超えるものもあるそうです。しかし高さ的にはユーカリに負けていて、アルバニ山の姿はユーカリによるところが大きいように見えます。山の上のほうで倒れ ていたのはもしかしてカシの木じゃないのかしら。

   はじめのころアルバニ山周辺の坂道を歩きながら、むかしむかし、アメリカ人もスペイン人もいなかったころ、人工の道路もなくて、インディアンの先祖が住んでいた頃の原始の森の姿をあちこちに幻視したつもりでいたのですが、イメジが違ったようです。

1988230

アルバニ山の海側のピアス通り沿いの入口(4月24日撮影)

 

1972576

海と反対側の、サンパブロ通りのさらに東側のEvelyn 通りからの眺め(7月18日撮影)

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参考url――

 "City of Albany, CA: Albany Hill" <http://www.albanyca.org/index.aspx?page=592> Albany 市のHP

ウィキペディア「ユーカリ」 <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AA>

桜井敏浩「ユーカリ植林と環境問題――ブラジルでの議論を中心として」 <http://www.bizpoint.com.br/jp/reports/sakurai/sk11_00.htm> Bizpoint 内の「桜井ブラジル評論コーナー」〕

EucaLink <http://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/PlantNet/Euc/> 700, 800種、いや1000種以上あるといわれるユーカリについてのオーストラリアのウェブガイド〕

Wikipedia, "Eucalyptus" <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Eucalyptus>

Robert L. Santos, "The Eucalyptus of California: Seeds of Good or Seeds of Evil?" (1997) <http://www.library.csustan.edu/bsantos/euctoc.htm>

Dendrology at Virginia Tech Home <http://www.cnr.vt.edu/DENDRO/dendrology/main.htm>

EUCALYPTOLOGICS: GIT Forestry Consulting's Eucalyptus Blog <http://git-forestry-blog.blogspot.com/2008/08/eucalyptus-species-identification-iv.html> eucalyptology を学として提唱する、たぶんカリフォルニアの団体のページ〕

UC/JEPS: Jepson Manual treatment for QUERCUS agrifolia var. oxyadenia <http://ucjeps.berkeley.edu/cgi-bin/get_JM_treatment.pl?4316,4326,4328,4330> coast live oak についての記述を含むUCB のページ。James C. Hickman, ed. The Jepson Manual:Higher Plants of California (1993) のネット版〕

 

 


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