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August 6 翻訳著 Translation [メモ]

August 06, 2008 (Wednesday)

   これは個人的メモです。

    日本の、とある学会〔と学会ではない〕から、モーリちゃんの父が前に誤植を沢山指摘したので――-- <!--[endif]-->先回〔千回ではない〕も誤植を随分見つけてくださったので、この段階で、みてくださいませんか、とメールに添付で会報〔解放どころではない〕の原稿が送られてきた。

  あいよー、と、猛烈なチェックを夕方図書館から帰宅後に始めて訂正を入れたファイルと説明の文書を先ほど送り返したところだが、ひとつ気になったことに書誌のなかでの「翻訳著」という分類名称があります。

  実は初めて目にしました、たぶん。で例によってネットで調べてみると、けっこうある。「翻訳著に「アメリカの医療と看護」(保健同人社)など多数。」(「書評」<http://www.jscf.org/jscf/SYOHYOU/okamoto.htm>)とか、「書籍名:国際版・世界の美術館 8 ミュンヘン美術館 著者名:森洋子翻訳著」(日本の古本屋:古本・古書リスト <http://www.kosho.or.jp/list/207/207-16.html>)とか、「原著・翻訳文をご覧になりたい方は、下記をご覧下さい。・原著(English) WHO Terminal report series 916 "DIET, NUTRITION AND THE PREVENTION OF CHRONIC DISEASES"
Report of a joint FAO/WHO Expert Consultation
 ・翻訳著 WHOテクニカルレポート916 「食事、栄養および慢性疾患予防」【国連食糧農業機関/世界保健機関の共同報告書】」(2003年 FAO/WHO 歯科疾患予防の勧告 <http://www.f-take.com/fao-who-2003report.htm>)とか。

  ググルやヤフの検索で上位でヒットするのはウィキペディアですねー。でもウィキペディア内で検索すると五つしか出てきません。そのうち二つは「翻訳著書」という言葉で、「翻訳著」は三つだけですが(Search results for 翻訳著)。五件のいずれも人名で、「翻訳著」の三つのうち二人は大学教授で「単著」「共編著」「翻訳著」もうひとりはさらに、「論文」と並んでいます。残りのひとりは『ちびくろさんぼ』や『ひとまねこざる』の翻訳で有名な光吉夏弥で、「翻訳著」のみ4冊あがっています。ちなみに「翻訳著書」は映画監督のジョン・ウォーターズと哲学者のショーペンハウエルで、つまり日本語に訳された著作の意味で「翻訳著書」という言葉が使われているようでございます。よくわかりませんが、「アカデミズム」の人かなんかがこういう表記をウィキペディアに入れつつあるのかとソンタクされます。十年以上前でしょうか、複数の筆者による論文集に入れた論文を「論文」じゃなくて「共著」と表記し、ただの論文で単行本でなくても「単著」と表記する(単著の単行本は「著書」)ように文部科学省が指導だかなんだかしたようですが、そういう流れのなかで自発的ないし行政的に起こった奇妙な日本語なのでしょうか、どちらも、みんな。

  あと、ちょっと違うパタンだと、「DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す―お母さんと支援者のためのガイド ランディ バンクロフト (著), Lundy Bancroft (原著), 白川 美也子 (翻訳), 阿部 尚美 (翻訳), 山崎 知克 (翻訳), 白倉 三紀子 (翻訳) (著)」 (ウィメンズカウンセリング徳島 <http://wctokushima.com/books/show_book.php?isbn=1193>)とか、「Web解析Hacks  Eric T. Peterson (著), 株式会社デジタルフォレスト (監修), 木下 哲也 (翻訳), 有限会社 福龍興業 (翻訳) (著)」(活動スケジュール|EO <http://www.eojapan.org/cat3/>)とか。

  こういうのを見ると、著作権の意識がなせるわざか? とも思われます――実のところ「(著)」がどこにかかっているのか定かではないのですが(笑)。「■恐竜はネメシスを見たか リチャード ミュラー/手塚 治虫 (翻訳) (著)■」(<http://cottonbook.ocnk.net/product/176>)みたいなのもよくわからんです。逆じゃろー、という感じ。まあ訳者のほうが名前がでかいというパタンですが、しかも監訳だし。

   また違うパタンでよくわからんのはアマゾンの「愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF) (文庫) ジェイムズ,Jr. ティプトリー (著), ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (翻訳, 著), 浅倉 久志 (翻訳) 」 みたいなの。

  ううむ。やっぱり研究者のネット上の業績とか見ると「翻訳著」と書いている例がありますねー。

  翻訳は翻訳なんで、著なんかつけたってしょうがないと思うのですが。そんなにこだわるなら、論文も論文著、発表も発表著。作品の場合は作品著、小説著、詩著、 とつい言いたくなるが、やっぱり日本語がおかしいのはおかしいし、おかしいのを世間にまで広めようとするな、と言いたいです。英語だったら、どんなにエライ人の翻訳の仕事だろうがどんなにエライ作品の翻訳だろうが、translationでしかないと思いますが。まあ translation works という言葉はありそうではありますが。

 

 Translation.gif

    メモですので、翻訳著作権関係の文章を貼り付けておきます(読む必要はありません)。「平成19年度特許庁委託事業 韓国産業財産権調査報告書 (第51回)」 <http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/kr/ip/pdf/0706_report.pdf>

翻訳著作物の実質的類似性の判断方法及び独占的翻訳出版権者の著作権者代位のための保全の必要性に関して判断した事例
【書誌事項】
当事者:○○(原告) v. ○○(被告)
判断主体:大法院
事件番号:2005 ダ 44138
言渡し日:2007 年 3 月 29 日
事件の経過:確定
【概要】
(1)翻訳著作物の創作性は、翻訳者の創意と精神的努力が宿った部分にあるものであり、その翻訳著作物に現れた事件の展開、具体的なあらすじ、登場人物の性格と相互関係、背景設定などは翻訳著作物の創作的表現であると言えないため、翻訳著作権の侵害如何を判断するために翻訳著作物と対象著作物間に実質的類似性があるかどうかのを判断においては、翻訳著作物の創作的な表現に該当することだけを持って対比しなければならない。
(2)著作権者との利用許諾契約により取得する独占的翻訳出版権は独占的に原著作物を翻訳し出版することを内容とする債権的権利であるため、第三者が作成した著作物が原著作物の翻訳物であると見られない時は、独占的翻訳出版権者が著作権者を代位しその第三者を相手取って侵害停止などを求める保全の必要性があると言えない。
【事実関係】
原告は、「ロバの耳」という題号のフランス語原作小説の著作権者と原作に忠実且つ正確に翻訳すると約定し、利用許諾契約の一種である独占的翻訳出版契約を締結して韓国語に翻訳した本件小説を出版した。その後、被告が上記のフランス語原作小説と類似の対象童話を出版したところ、これに対して原告は両著作物間に実質的類似性があり本件小説に対する翻訳著作権が侵害されたことを理由に、併せて独占的翻訳出版権に基づいて原作小説の著作権者を代位し、本件著作権侵害停止請求の訴えを提起した。
【判決内容】
(1)翻訳著作物の創作性は、原著作物を言語体系が異なる国の言語に表現するための適切な語彙と構文の選択及び配列、文章の長短及び叙述の順序、原著作物に対する忠実度、文体、語調及び語感の調節など翻訳者の創意と精神的努力が宿った部分にあるものであり、その翻訳著作物に現れた事件の展開、具体的なあらすじ、登場人物の性格と相互関係、背景設定などは場合によって原著作物の創作的表現に該当し得ることはさておいても、翻訳著作物の創作的表現であると言えないため、翻訳著作権の侵害如何を判断するために翻訳著作物と対象著作物間に実質的類似性があるかどうかの判断においては、上記のような翻訳著作物の創作的な表現に該当することだけをもって対比しなければならない。
 また、対象著作物が既存の著作物に基づいて作成されたかどうかと両著作物間に実質的類似性があるかどうかは互いに別個の判断であって、前者の判断には後者の判断と異なり著作権法によって保護される表現だけでなく著作権法によって保護されない表現などが類似しているかどうかも共に参酌され得るため、対象童話が本件小説に基づいて作成されたかどうかの判断において著作権法により保護されない表現などの類似性を参酌できるとして両著作物間の実質的類似性如何の判断においても同一に上記のような部分などの類似性を参酌しなければならないものではない。
 本件小説の個々の翻訳の表現を構成している語彙や構文と部分的に類似に見える語彙や構文が対象童話で時々発見されるが、そのような事情だけで直ちに本件小説と対象童話の間に実質的類似性があったり本件小説に対する翻訳著作権が侵害されたりしたとは断定できず、その実質的類似性を認めるためには対象童話で類似語彙や構文が使われた結果、本件小説が翻訳著作物として持つ創作的特性が対象童話で感知される程に至ったという点が認められなければならない。
 しかし、本件小説と対象童話で一部類似語彙や構文が占める質的あるいは量的比重は僅かであり、本件小説は社会批判小説として青少年層を読者層とする反面、対象童話は乳幼児童として児童などを読者層としており、その結果類似語彙や構文などが配列された順序や位置、その類似語彙や構文が挿入された全体の文章や分段の構成、文体、語調及び語感などで相当な差が見られるため、本件小説が翻訳著作物として持つ創作的特性が対象童話で感知されるとは見難い。従って本件小説と対象童話の間に実質的類似性があるとは言えない。
(2)著作権者と著作物に関して独占的利用許諾契約を締結した者は、自身の権利を保全するために必要な範囲内で著作権者を代位し著作権法第91条に基づいた侵害差止請求権などを行使することができると言えるが、著作権者との利用許諾契約により取得する独占的翻訳出版権は、独占的に原著作物を翻訳し出版することを内容とする債権的権利であるため、第三者が作成した著作物が原著作物の翻訳物であると見られない時は、独占的翻訳出版権者が著作権者を代位しその第三者を相手取って侵害停止などを求める保全の必要性があると言えない。
 ところが、対象童話はフランス原作小説の分量を大幅に縮小し登場人物と逸話の数、具体的なあらすじの細部展開などを減らしたり単純化し、登場人物の職業と細部的な性格及び背景設定などを異ならせその主題と結末を変える等の相当な変更を加えた結果、対象童話がフランス語原作小説の翻案物に該当するかどうかは別論としてその翻訳物であるとは到底見られないため、原告がフランス語原作小説の著作権者を代位し対象童話の複製、配布などの禁止などを求める保全の必要性があるとは言えず、本件債権者代位請求部分の訴えは不適法である。
【専門家からのアドバイス】
著作権法は翻訳物を著作物として例示してはいないが、語文著作物の一つとして著作権法により保護され得るのは当然である。しかし、翻訳物自体の著作権を主張できる部分は上記の判示でのように原著作物に見られない創作的表現に限定される。また、翻訳出版権者が原著作者を代位し権利行使をすることにおいても対象著作物が翻訳の程度を越えた場合、代位権行使のための保全の必要性は認められない。このような点を考慮すると、翻訳出版権者は原著作者と契約を締結する時、翻訳出版権者の権利を侵害する一定の状況が発生した場合、原著作者が翻訳出版権者の利益を保護するために訴訟を提起する義務を賦課する条項を設ける等の方策を予め確保しおく〔ママ〕ことを積極的に考慮してみる必要がある。

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