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September 12 ジェレミー・イーニックの解説文章で英語の勉強をしてみる Jeremy Enigk [メモ personal notes]

September 12, 2008 (Friday)

以下はなかば私的なメモです。

September 11 サニー・デイ・リアル・エステイトとジェレミー・イーニック Sunny Day Real Estate and Jeremy Enigk

のつづき。

  サニー・デイ・リアル・エステイトとジェレミー・イーニックについての話で、 『カエル女王カエル』というアルバムに関してイーニックの解説文章の日本語への違和感という話です。で、英語を適当に(だって抜けてるし)訳しているらしいことがわかりました。

When Sunny Day Real Estate founder and front man Jeremy Enigk left the band at the apparent peak of their power, many fans were inconsolable.  Their shadow had just begun to cross the threshold of mainstream acceptance.  After taking a brief soul-searching hiatus from recording, Enigk returned in 1996 with a brilliant solo album, The Return of the Frog Queen.  On this outing, Enigk traded in sonic cavalcades of guitar for string arrangements and swapped heart-impaling confessional psalms for brooding, imaginative fables.  The album offers a sumptuous repast of orchestral rock and Lewis Caroll-inspired lyrics at which Renaissance Fair enthuasists, Emoids, and discriminating Goths may dine with equal delight.  Though Enigk would subsequently return to the Sunny Day Real Estate fold, for many fans, this will remain his most impressive showing.
                                                                         - Chad Driscoll

サニー・デイ・リアル・エステイトの創立者でフロントマンのジェレミー・エニックがバン ドの絶頂期に脱退すると、多くのファンは落胆した。それは丁度バンドがメインストリームに食い込みはじめている時期だった。音楽業界から離れてしばらく内省した後、エニックは96年にソロ・アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・フロッグ・クィーン』で復活。以前のギター・サウンドと胸を刺すような歌を放棄、 新しくストリングスをアレンジして内向的かつ想像性豊かな物語を作り上げる。それはルネッサンス復興愛好家からエモ系、目の肥えたゴスまでがうっとりする ような内容だった。エニックはその後、サニー・デイ・リアル・エステイトに戻るが、多くのファンにとってこのアルバムが頂点だったと言える。

サニー・デイ・リアル・エステイトというバンドの結成とイーニックの参加の経緯は前に触れました。"front man" というのは、古い日本語でいうと「表看板」ですが、バンドのリードプレーヤー、ふつうはリードボーカルのことです。 "apparent" という形容詞を訳は落としてますが、バンドの精力(古っw)の頂点と「思われた」ということです、この言葉は、のちにバンドが再結成されて新たなパワーを出すことと関係しているでしょう。"inconsolable" というラテン系のむつかしげな単語は文字どおりには「慰めることができない」ということですが、慰めようのない悲しみに沈んだ、打ちひしがれた、ということです。"cross the threshold" は「敷居をまたぐ」の意味ですけれど、メインストリームの玄関口からなかに入ることを許されるところだった、というようななかば比喩的な意味で使われているのだと思います。その次の文の "hiatus" は「休み」「休暇」です。レコーディングから短い休みをとって自分探し、いや魂探しの旅に出て、1996年にすばらしいソロ・アルバム『カエル女王の帰還』をさげて戻ってきた。 "On this outing"の "outing" は "hiatus"とイメジはつながっていて、「そと出, 遠足, 外出」の意味なのか、それとも不在状態からこちらへの「登場, 出ること」なのか、はっきりしません(英語の文章は、構文レヴェルでなくて語彙レヴェルだと、むつかしい抽象的なことばでわかりにくい場合と、やさしい曖昧なことばでわかりにくい場合とありますが、このチャド・ドリスコールという人の文章は両者をまぜあわせたわかりにくさがありますね)。「このときに」と書いてくれたらよいし、いっそのことそれもなくても意味は同じなのに。"Enigk traded in" の "trade in" は「下取りしてもらう」「(引き換えに)手放す」の意のちょっとイロのあるイディオム。でも、次の動詞の "swapped" の swap とまあ同じで、両方とも exchange ということです。"sonic cavalcade" は検索で30件ぐらいヒットするような、あ、複数形の "sonic cavalcades" だと3件しかヒットしないような、気取っておしゃれなフレーズ(「音の騎馬行進」)。こんなのは訳す必要はないと思いますが、それにしてもギター・サウンドそのものは放棄してないと思うのだが。「胸を刺すような歌」の元の英語の "heart-impaling confessional psalms" から落ちている "confessional" 「告白的」、というのはいわゆるEmo の私小説的というか個人的な詩の世界と関係する形容詞です。それにしてもなんd "psalms" 「聖歌」 なのかわからんす。songs でいいじゃんか。で、それが捨てられて代わって出てきたのは "brooding, imaginative fables" だと書いています。fable は「寓話」です。"brooding" はあいまいですが、「思いに沈む」ぐらいの意味でしょうか。「沈思黙考的」かな。物思いに沈む、想像力にみちた寓話かな。ここで "imaginative"は"confessional" と対照的なものです、もちろん。私的な告白詩から想像力による寓話へ転換があったということです。

  そのつぎの文が、問題の「ルネサンス・フェア」を含んでいるのみならず、「ゴス」まで入っちゃっている部分です。

  ちなみに、今日のソネットの横断ビンゴは 「So-net テキスト翻訳」のページを見せられることになり、ふと気がつくと次の日本語があらわれていました。――

サニーDay Real Estate創設者と表看板ジェレミーEnigkが彼らの力の見た目のピークにバンドを去ったとき、多くのファンは悲しみに沈んでいました。彼らの影は、ちょうど今主流受理の出発点を横切り始めました。レコーディングから短い自己分析中断をとった後に、Enigkは素晴らしいソロアルバム(Frog女王のReturn)とともに、1996年に帰りました。この遠出に関して、Enigkはストリング準備のためにギターの音の行列を下取りに出して、心臓を突き刺している告白の聖歌を気味の悪い、想像力に富んだ寓話に換えました。アルバムは、オーケストラ岩の高価な食事とルネッサンスFair enthuasists、Emoidsと識別するためのGothsが等しい喜びと食事をするかもしれないルイスキャロルの感化を受けた歌詞を提供します。EnigkがサニーDay Real Estate折り目にその後戻るけれども、多くのファンにとって、これは彼の最も印象的な展示のままです。-チャドドリスコール

  「オーケストラ岩」はねーよな(プッ)というような誤りはありますが、作為的じゃないからcheat がなくて問題の所在がわかるところが機械翻訳の利点ですか(?)。 あと、誤字がわかるし・・・・・・enthuasists じゃなくて enthusiasts ですね。もいっちょいってみよー。――はい。この語を含むセンテンスは、「アルバムは、オーケストラ岩の高価な食事とルネッサンスFair狂、Emoidsと識別するためのGothsが等しい喜びと食事をするかもしれないルイスキャロルの感化を受けた歌詞を提供します。」に変わりました。

   えーと、「オーケストラ岩の高価な食事と」じゃなくて、「ロック・オーケストラ(的な音楽)とルイス・キャロルにインスピレーションを与えられた歌詞という贅沢なごちそう」ですね。で、そのゴチに対して、ルネサンス・フェア大好き人間も、Emoids (「エモやんたち」と訳したい欲求に駆られますが、この、やぱーり今の英和辞典には載っていない語を、前に参照したことのあるUrban Dictionary の記述を借りると、 "A person or persons that stereotypically fall into the category of being a emo kid" となります。が、"emo" はなんや、ということで、見ると、この辞書は執筆者複数の場合は併記なのね。Wikipedia より民主的ということになるのかしら(ウィキペディアの "Emo"; 「エモ」)もゴス信奉者も等しく喜びを味わう、という、そういう豊かなオイシイものができました、という主旨です。

   "oid" というのはギリシア語の eidos に由来する言葉(接尾辞)ですから 「・・・の形をもっている、・・・状」のというような意味です。Vocaloid の鏡音レンとリンとか。この eidos という言葉がよくわからんのは、『広辞苑』の文章を引くなら、「形相」とは「①かたち。すがた。ぎょうそう ②〔哲〕(idea; eidos (ギリシア)・form (イギリス)) 質料に一定の形を与えて、一個の現実的存在者として成立させる構成原理。これを、プラトンは事物から超越する原理とし、アリストテレスは事物に内在する原理とした。以後現代に至るまで哲学の基本概念の一。⇔質料。」となります。これは若い頃のモーリちゃんの父にはまったくもって不可解な話で、だって、idea があって、 form があるはずなのに、なんでidea と form が一緒なんだよ、という疑問。ま、いまもよくわかってはおらんですが(頭でわかっても感情がウンと言わないw)。

  でもまあ、ぶっちゃけ、英語の接尾辞の使い方としてはもっぱら非哲学的な意味のform ですね、物質的な、つまり形が似ているみたいなぐらいな。そして、よくわからんけど、なんで "emo" に "emoid" という(ちょっとヤユ的な)言葉があるかというと、 emotion というのは内的なものだけれど、それに流行的に乗っかるみたいな感じなのかなあと。ま、型ですね。

   そのつぎのGoths は、"Renaissance Fair enthuasists, Emoids, and discriminating Goths" と3者が並んでいる中で、唯一形容詞をあたえられています。そこがあやしい。「目の肥えたゴス」って、肥えたゴスロリ娘はいるでしょうけど、どういうことでしょう。よくわかりませんけれど、あるいは次のような可能性が考えられます。ひとつは、もともとSDRE のボーカルはゴス的な唸るような低音で歌うDan Hoerner であったこと。もうひとつはゴスのファンは必ずしも "discriminating" ではないが、そのなかで「聴く耳のある」というやや揶揄的・批判的な限定の形容詞(だって、そうでなければ、Goths はみなdiscriminating というワザトラシイ形容になってしまう)。

   最後のセンテンス。Though Enigk would subsequently return to the Sunny Day Real Estate fold, for many fans, this will remain his most impressive showing. would は過去未来。「のちに戻ってくることになる」  だけど、多くのファンにとって、このアルバムがイーニックの最も印象的な "showing" でありつづけるだろう、と〆ています。 "showing" というのも "outing" と同じくことばは優しいのに意味がよくわからないことば。ただ「作品」と言ってくれてもいいと思うのですが。内的なものを示すという含みなのでしょうか。イーニックの人と世界を示す印象的な作品として残るだろう、みたいなのが意訳かなあ。

   ああ、むつかしかった。

   ルネサンス・フェアというのはイタリア・ルネサンスじゃなくて英国のエリザベス朝ルネサンスの、ということはエリザベス女王(一世)の時代のイギリスの風習や衣装を再現して遊ぶおまつり(常設のものもあります)ですが、しばしばユル~く中世まで入れてしまうようです。いっぽうゴスのもとのゴシックが中世のものであると同時に18世紀から19世紀にかけてのゴシック・リヴァイヴァルともかかわっていることを考えると、アメリカの精神史の前史にたぶん深くかかわっていると思われ、ちょっとマジで考えてみたいと思っているモーリちゃんの父でした。


2008年10月17日追記 以下の記事でルネサンス・フェアについて書きました(書いています)――

September 24 ルネサンス・フェアをめぐって (上)  Renaissance Fair (1) 

September 30 ルネサンス・フェアをめぐって (中)  Renaissance Fair (2)

October9 メリーマウントのメイポール(五月柱)――ルネサンス・フェアをめぐって (中の続き)  Renaissance Fair (3)

 

 


 

 


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sirube

突然のコメント失礼致します。
勝手ながら私どものサイトからこの記事へリンクをさせていただきました。
http://sirube-note.com/english/

もしよろしければ、こちらのページより相互リンク登録もしていただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/english/link/register/
現在のページからのリンクは一定期間の予定ですが、よろしくお願い致します。
(自動書込のため、不適切なコメントとなっていましたら申し訳ございません)
token:VQ2cuBDY

by sirube (2008-09-15 01:15) 

morichan

sirubeさん、ていねいなご案内ありがとうございます。了解しました。
by morichan (2008-09-16 14:24) 

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