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September 20 トラップ・ファミリー合唱団のおおスザンナ "Oh! Susanna" by the Trapp Family Singers [スザンナ周辺]

September 20, 2008 (Saturday)

   音楽好きの孤児の女の子が修道院生活になじめずに派遣された家庭教師先の男ヤモメと恋に落ち、最初はうとまれていた子供たちからも好かれるようになり、みんなで一緒に合唱団をつくって音楽的な生を生きるトラップ一家の物語は、マリア・フォン・トラップ Maria von Trapp、 (旧名 マリア・アウグスタ・クッチェラ Maria Augusta Kutschera: 1905 - 87) が、夫の死後の1949年にMaria Augusta Trapp 名でアメリカの出版社から出した The Story of the Trapp Family Singers と、それを元にしたミュージカルや映画(いちばん有名なのはジュリー・アンドルーズの『サウンド・オブ・ミュージック』)などで有名になっています。モーリちゃんの父は、何年か前の春から夏にかけて衛星放送で再放送していたアニメを見てとてもおもしろかったのを覚えています。でも最終回を見た記憶がないのは、8月に帰省したときに録画をしそびれたか失敗したか、それともあれこれ一緒に録ってまぎれてしまったのかもしれない。

  アニメのほうでは、ナチスの台頭とオーストリア併合、それに反発するトラップ少佐たちが描かれていたと思いますが、トラップ一家は1938年にイタリア経由でアメリカに亡命します。 このへん、ウィキペディア日本語の「マリア・フォン・トラップ」の記事を引くと、こんな感じです。――

1933年、オーストリアを襲った金融恐慌によってトラップ家の財産を預けていた銀行が倒産し、財産を失った。その頃知り合ったフランツ・ヴァスナーという神父は、グレゴリオ聖歌に精通しており、兄弟姉妹の歌の指導をするようになった。さらにひょんなことから1935年のザルツブルク音楽祭に参加し、ヴァスナー神父の指揮で兄弟姉妹と母親で歌ったところ優勝してしまった。以降、この合唱団は人気となり、やがてヨーロッパ全域を回り、「トラップ室内聖歌隊」という名前でコンサートをおこなうようになった。

1938年、オーストリアはナチス政権下のドイツに併合された。ちょうどその頃、アメリカ合衆国のエージェントから公演の依頼を受けていたこともあり、家族でオーストリアを離れることになった(ナチ党員だったにもかかわらず一家に同情的だった執事が亡命を進言した)。一家と行動を共にすることに決めたヴァスナー神父と一家は汽車を乗り継いでスイス、フランス、イギリスへと渡り、サウサンプトンからアメリカへ向けて出航した。アメリカでのビザが切れると再び一家はヨーロッパへ戻り、そこでもコンサートを行って、1939年10月に再びニューヨークへやってきた。

1940年になると大手プロダクションが家族のプロデュースを引き受けることになったが、その時に「トラップ聖歌隊」という名前を改めて「トラップ・ファミリー合唱団」にし、曲目から聖歌を減らしてフォークソングを中心にするよう改められた。こうしてアメリカ中をまわるようになると再び評判を呼び、1956年までコンサート活動をおこなった。1948年、一家はようやくアメリカの市民権を得た。

夫ゲオルクは1947年に亡くなったが、マリアは家族の歴史をつづった The Story of the Trapp Family Singers(1949年、『トラップ・ファミリー合唱団物語』)や Around the Year with the Trapp Family (1955年、『トラップ一家の一年』)などを次々と出版し、ベストセラーになる。

英語のWikipedia の "Maria von Trapp" や下に挙げた『ニューヨーク・タイムズ』の記事はいずれもイタリア経由でアメリカと書いてあるのですが、実際のところはもうちょっと調べてみないとわかりません。目にとまった、Joan Gearin, "Movie vs. Reality: The Real Story of the Von Trapp Family"という長い文章(旅客記録とか、アメリカ市民になるための請願書とか、宣誓書とか、1942年にナイアガラフォールズ(ナイアガラの滝のアメリカ側の市)に永住の目的で入国した記録とか、いろいろな写真資料あり)を読んだかぎりでは、映画ではスイスだけれど、実際はイタリアへ向かったのが事実のようですし、市民権獲得の年についても違うようです。

  ともあれ、the Trapp Family Choir というキリスト教的な含みのある名称を変更するととともに、アメリカの民謡をレパートリーに積極的に入れたのは事実でしょう。

  で、次に引くのは、1958年のドイツ映画からです。『続・菩提樹』(Die Trapp-Familie in Amerika[The Trapp Family in America])――

 

"Trapp Family: Oh, Susanna/ I come from Alabama" (1:37) posted by "Jairdan" on May 10, 2007

   次男のヴェルナーだと思うのですが、 すごく高いボーイソプラノで、よいです。昨年2007年10月に91歳で亡くなっています。"Werner von Trapp" Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Werner_von_Trapp>

   って、現実と映画の混交が起こってます(そういうのを思うたびに思い出すのは大江健三郎の初期の小説のどれだかに出てくる、明治天皇と乃木将軍の映画を見て、明治大帝はりっぱで云々という感懐を抱く人間について揶揄する文章ですが、確認しないままに年が過ぎています)が、それも含めてしみじみしたのでした。

 

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The Trapp Family Lodge, Stowe, VT: A Little of Austria . . . A Lot of Vermont <http://www.trappfamily.com/> 〔1940年代前半に農場を買ってトラップ一家が住み着いたヴァーモント州Stowe のトラップ家のホームページ〕

Peter Kerr, "Maria von Trapp, Whose Life Was 'Sound of Music' Is Dead" New York Times, March 29, 1987 <http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9B0DEED91738F93AA15750C0A961948260> 〔3月27日に亡くなった翌日の『ニューヨーク・タイムズ』紙の obituary。アメリカに着いて最初の大きな劇場での公演について、昔の記事を引用して次のように書いている――〕

Their first major concert, which brought the Trapp Family Choir national attention, took place in New York in Town Hall on Dec. 10, 1938. In a review of their opening performance, The New York Times commented:

''There was something unusually lovable and appealing about the modest, serious singers of this little family aggregation as they formed a close semicircle about their self-effacing director for their initial offering, the handsome Mme. von Trapp in simple black, and the youthful sisters garbed in black and white Austrain folk costumes enlivened with red ribbons. It was only natural to expect work of exceeding refinement from them, and one was not disappointed in this.''

"The Story of the Real Maria von Trapp" <http://myfavouritethings.homestead.com/mariastory.html>〔個人のウェブサイト The Sound of Music <http://myfavouritethings.homestead.com/Homepage.html> 内。写真が数葉あります〕

Joan Gearin, "Movie vs. Reality: The Real Story of the Von Trapp Family" Prologue, Winter 2005, vol. 37, no. 4 <http://www.archives.gov/publications/prologue/2005/winter/von-trapps.html> 〔映画と現実の違い。最もこの映画は事実と違っているというのはたいへん有名な話です。いろいろな画像資料を掲載しているところが興味深い〕

 

 

 


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