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October 14 サンターナと悪魔の神 Santana, the Devil and God [断章 fragments]

October 14, 2008 (Tuesday)

    承前。南カリフォルニアで吹く悪魔の風(というのはメキシコでの呼ばれ方による)サンターナのつづきですが、なんだか思いつきの気分が萎えてしまっています(思いつきというのはそういうものなのでしょうが)。

   Santa Ana はふつうは聖 Anaと前の記事の最後で書きました。英語だと Saint Anne あるいはSaint Ann また Saint Anna とも。この人はイエスの母のVirgin Mary の母親ですが、Mary を処女懐胎したという伝承も生まれたりして神格化(というと異端的ですけど聖人化)された――紀元2世紀と推定される聖書外典(アポクリファ)の「ヤコブによる原福音」(Gospelof James=Infancy Gospel of James=Protoevangelium of James) ――なんでJacobがJames やねん、という問題は今回扱わない――は、マリアの処女懐胎を言うと同時にハンナ(アンナ)(ヘブライだとHannahさん)の処女懐胎も語る。だから天使がやってきて懐妊を知らせる「受胎告知 Annunciation」という有名なキリスト教美術のモティーフもマリアのイエス懐胎だけじゃなくてアンナのマリア懐胎でも描かれます――

420px-GaudFerrariAnnuncJoachAnna.jpg

Gaudenzio Ferrari (1475-1546), The Annunciation to Joachim and Anna (c.1545); detached fresco transferred to canvas, Pnacoteca di Brera, Milan; from "Saint Anne," Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Saint_Anna>

  (竹下節子『聖母マリア――〈異端〉から〈女王〉へ』〈講談社, 1998)のブログ『First Light』の紹介記事 「竹下節子『聖母マリア <異端>から<女王>へ』」(Dilectio proximi, 2007.10.1) も参照) 。

   処女懐胎の連鎖もハンナ(アンナ)でとまっているようで、マリアがその後キリスト教の父性原理を、「聖霊」とたぶん手をたずさえて補完しつつ神格化されていくのに対して、ハンナは聖人の先頭に位置するようになります(ローマ教会はSt. Anne の処女懐胎を1677年に否定)。

SaintAnne.jpg

えはがき「聖アンナさま、あなたが処女マリアをお守りくださったように私たちをお守りくださいますよう」

  日本語のウィキペディアでは「アンナ(マリアの母)」という項目が立っている。その記事の言葉を借りれば、――

スペイン語では「聖アンナ」はサンタアナ・転じてサンタナとなる。エルサルバドルのサンタアナなどがこの聖人にちなんで名づけられている。

  さて、ここで、確認しておくと、南カリフォルニアに吹く風として有名なSanta Ana は、由来が不明確なものの、第一に、スペイン語起源ではないかと考えられている、第二に、Santana がもともとの綴りだったという説もある、第三に、英語のSatanに通じるスペイン語の崩れたかたちだとの説もある。

  ま、わしにもわかりませんわ。

  しかし、サンタナといえばロックである。・・・・・・という思いつきでもともと書こうとしておったわけですが、間をあけたら「アブラクサスの祭」という小説を書いた玄有宗久という坊さんだのについても調べる羽目になり、ほとほと困りました。ヘルマン・ヘッセとカルロス・サンタナどまりにしたかったのですけれど。

  ということで、以下簡略化したメモです。

  第一。ロックバンドのサンタナは、リーダーのメキシコ出身のカルロス・サンタナ Carlos Santana (1947 - )の姓だということになっている。 1966 年サンフランシスコで結成。ファーストアルバムSantana (1969)、セカンドアルバムAbraxas (1970)。

  第二。日本版が『アブラクサス――天の守護神』と訳されているセカンドアルバムのタイトルは、ヘルマン・ヘッセの『デミアン』から取られている(ジャケットに引用がある)。――"We stood before it and began to freeze inside from the exertion. We questioned the painting, berated it, made love to it, prayed to it: We called it mother, called it whore and slut, called it our beloved, called it Abraxas..." <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Abraxas_(album)>; Cf. 「ONLY BEST ONE~PART2~ ABRAXAS by SANTANAロック&サルサ&ブルース&ジャズの融合これぞ珠玉の1枚・・・」 <http://www.you-next.jp/2008/02/post-76.php>

  第三。 アブラクサスは古い石にAbrasax とかAbracax とかAbraxas のかたちで刻まれた謎めいた言葉だったが、いっぽうグノーシス派の文献にも名が出てくる存在で、悪魔と神の両方を内包したエジプトの神だとも考えられている。図像は頭がトリ、下半身がヘビもしくは竜で描かれている。参照 "Abraxas" Wikipedia <https://secure.wikimedia.org/wikipedia/en/wiki/Abraxas>

  第四。「不条理ゆえに我信ず」で有名なテルトリアヌスはアブラクサスについて書き記している。―― "He [Basilides] affirms that there is a supreme Deity, by name Abraxas, by whom was created Mind, which in Greek he calls Nous; that thence sprang the Word; that of Him issued Providence, Virtue, and Wisdom; that out of these subsequently were made Principalities, powers, and Angels; that there ensued infinite issues and processions of angels; that by these angels 365 heavens were formed, and the world, in honor of Abraxas, whose name, if computed, has in itself this number. Now, among the last of the angels, those who made this world, he places the God of the Jews latest, that is, the God of the Law and of the Prophets, whom he denies to be a God, but affirms to be an angel."

  第五。20世紀においては、まずユングがグノーシス研究でとりあげたことが知られる――"Abraxas speaketh that hallowed and accursed word which is life and death at the same time. Abraxas begetteth truth and lying, good and evil, light and darkness in the same word and in the same act. Wherefore is Abraxas terrible." (The Seven Sermons of the Dead [1907])

   第六。『デミアン』だけでなく『荒野の狼』でもアブラクサスに言及するヘッセはユングと交流があった。Cf. 掲示板「ヘルマン・ヘッセとユング」 <http://nataraja.egoism.jp/cgi-bin/bbs_theta/patio.cgi?mode=view&no=53> ; 「本の概要と感想など: ヘルマン・ヘッセファン倶楽部」 <http://hermannhesseclub.net/kanso.html>; 「たそがれblog | アブラクサス」 <http://obaco.arrow.jp/log/eid1302.html>; 「Another Road | ON THE ROAD」<http://takao.cocolog-nifty.com/room/2007/12/on_the_road_4f1d.html>

   第七。とくにサンタナ以降、いろいろなジャンルでアブラクサスの名は出るようになったらしい。eg.  オトフリート・プロイスラー『小さい魔女』(つなさんのブログ記事「魔女!/「小さい魔女|旧・日常&読んだ本log」; 楽天市場小さい魔女〔Kodansha English library〕:楽天ブックス); 玄有宗久 『アブラクサスの祭』(図書館-J「『アブラクサスの祭』/玄有宗久」; 「本の紹介6」 : 「おまえはそのままで正しい。神でも悪魔でもあるアブラクサスの啓示が聞こえた。精神を病みロックに没入する僧浄念が祝祭の頂点で見た輝く世界。禅僧作家の衝撃作。」; Ayuo.net 「何故1960年代のドラッグが無意味になったか。」; 鎌田東二と作者の対談「日本人の宗教観----中外日報社」<http://www.chugainippoh.co.jp/NEWWEB/n-taidan/nihonjin/nihon03/nihon03.html>; ハリーポッターのDraco Malfoy のじいさん。

  と、ここまでを前提として、思いついたこと。Santana は確かにリーダーのファミリーネームだけれど、Abraxas と似て、聖性と悪性が混交した名前でもあり、そのへんカルロスのおっちゃんはわかっていて自我の刻印というだけじゃなかったんじゃなかろうか(実は周知のことだったりして)。いや、1966年にthe Santana Blues Band として結成されたというのは知ってますから突っ込まんでください。

  では曲をどうぞ(画像との関係は不明です。Charmed だからかしら。チャームドの第1シーズンに実はアブラクサスというdemonが出てくるんすけど)――


" Alyssa Milano: Santana: "Black Magic Woman" " (5:17) posted by WishSongs on September 24, 2006


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Dilection proximi、「竹下節子『聖母マリア〈異端〉から〈女王〉へ』」 <http://borges.blog118.fc2.com/blog-entry-89.html> 〔Firsty Light: まだ22歳の才媛のブログ〕

いろいろと変わった事典類に遭遇したので( ..)φメモメモ――

『魔術英和辞典 English-Japanese Magical Dictionary』 <http://www7.ocn.ne.jp/~elfindog/eiwa.htm> 〔「魔法引用詩句解題」Magical Mother Goose Nursery Rhymeの付録付き〕

Abraxas (グノーシス) アブラクサス。紀元2世紀アレクサンドリアのグノーシス派バジリデス教徒が崇めた至高神。Abraxas という文字のギリシャ語合計数値が365となるため、アブラクサスの下には一年の365日を司る従神格が365柱存在するとされた。上半身は王者、下半身は蛇の姿で表される。

『悪魔辞典』 <http://www2.wbs.ne.jp/~god/akumajiten.htm> 〔未完 「エリゴル」(なんやそれ)まで〕
アブラクサス【Abraxas】
デーモンじみた生物。頭は雄鶏、下半身は蛇、手には鞭と盾を持った姿でよく描かれ る。別称アブラカクスともよばれ、グノーシス主義におけるこの言葉はおそらく本来はバシレイデス派が至高の存在として表したのであったが、それがデーモン として降格されることとなり、しばしば魔除けの目的で宝石や石に刻みこまれた。しかし、このデーモン神が描かれていなくても魔除けがアブラクサスの石と呼 ばれることもある。

『神魔精妖名辞典』 <http://dug.main.jp/sinma/> 〔アイヌの「アプトルヤムペウェンユク」と「油澄まし」のあいだが「アブラクサス」〕

アブラクサス ユダヤの魔神で、「永却の貴公子」と呼ばれる。「アブラクシス(Abraxis)」、「アブラサクス (Abrasax)」などの名でも呼ばれる。また正式にはギリシア語で「αβραξασ」と綴る。雄鶏の頭に2匹の蛇を足とした姿をしている。右手には盾 を、左手には鞭を持っていて、この世の生き物と神との仲を調停する役目があるとされる。「アブラカダブラ(abracadabra)」という呪文はこの魔 神から来ているとされる。ヨーロッパ全般 > グリモアなど  文献:03

 

『魔術用語集』 <http://www.hi-ho.ne.jp/cgi-bin/user/yjpt/yogo.cgi> 〔魔術の部屋☆SPW <http://www.hi-ho.ne.jp/yjpt/Wizardry/home.htm> の中〕

アブラクサス
ABRASAX 〔ママ〕
紀元2世紀アレクサンドリアのグノーシス派、「バジリデス教徒」が崇めた至高神。
「Abraxas」 という文字のギリシャ語合計数値が365となるため、「精霊たちの王」とされ、「アブラクサス」の下には一年の365日を司る従神格が「365柱」存在するとされた。
王冠をかぶり馬車に乗って、頭が雄鶏で下半身が竜という姿で描かれた。
また「魔除け」としてこの名前を刻み込むことがある。 

 

 

 


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