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November 7 スターダスト Stardust [歌・詩]

November 07, 2008 (Friday)

   怒涛のペニーズ三連発を考えていたのですが、朝ふとアイラ・ガーシュウィンを調べていたら、以前見たことのあるページに再びたどりついて、不意に「スターダスト」を訳したい欲望に駆られました(自分の仕事をせいっちゅうの)。

  「スターダスト」と聞いて、小泉今日子ではなくてザ・ピーナッツを思い出す人はモーリちゃんの父と近いor上の世代と思います(なんのはなしか・・・お父っつぁん、おかゆができたわよYouTube)が、このきれいなメロディーは、Hoagy Carmichael (1899 - 1981)という、若い頃の交友関係――Bix BeiderbeckeとかLouis Armstrongとか――からいってもジャズの人ですけれど、でも歌声はちょっと土臭い、そういう意味でカントリーに通じるところのある、おじさんの作曲で、・・・・・・おやおや、日本のウィキペディアは「スターダスト」も「ホーギー・カーマイケル」もなしですか・・・・・・この人です――

Lauren_Bacall_with_Hoagy_Carmichael_in_To_Have_and_Have_Not.jpg

  1944年の映画To Have and Have Not (アーネスト・ヘミングウェイ原作)から、えーと、右がローレン・バコールで、まんなかが、ってわかりにくいですね。The Official Hoagy Carmichael Web Site の"short biography"の画像を借ります――

early_headshot_sm.jpg

via The Official Hoagy Carmichael Web Site <http://www.hoagy.com/index.htm>

   英語版のWikipedia の "Hoagy Carmichael" も(別の)若い頃の写真を掲げています。が、モーリちゃんの父の70年代――思えば彼は存命だったのです――にはじめて聞いていた頃のイメージは、ハンフリー・ボガートと並ぶウマヅラのおっさん(失礼)という感じでした。

  と、また話があさっての方向へ行きそうなので戻します。そのホーギー・カーマイケルの初期の傑作が1927年作曲の "Star Dust"、2年後に詞を添えられて "Stardust" となった曲です。ホーギー自身のピアノの演奏(歌なし)はYouTubeにありました(1933年録音のようです)――

 

  " Hoagy Carmichael - Stardust " (3:28) posted by "kspm01" on July 9, 2007

  制作の経緯等は、典拠は不明ですけれども、つぎのページが参考になります。 <http://d0v0b.info/kyoku/s/stardust.html>  ここには、2種類の訳詞(と原詞)が並んでいます。それから、一番参考になり、刺激を受けたのは、あいらさんのOn Such A Night As This というブログの記事です。 ビング・クロスビーの1931年の歌をまず――


  " Stardust - Bing Crosby 1931 " (2:44) posted by "MickeyClark69" on December 9, 2007

あえてわざと適当に句読点を入れて、詞を書いてみます――

[verse]
And now the purple dusk of twilight time     1
Steals across the meadows of my heart.
High up in the sky the little stars climb,
Always reminding me that we're apart.
You wander down the lane and far away,    5
Leaving me a song that will not die.
Love is now the stardust of yesterday,
The music of the years gone by.

[chorus (refrain)]
Sometimes I wonder why I spend
The lonely nights,                       10
Dreaming of a song.
The melody haunts my reverie,               
And I am once again with you,
When our love was new, and each kiss an inspiration.
But that was long ago, and now my consolation           15
Is in the stardust of a song.
Beside the garden wall, when stars are bright,     
You are in my arms.
The nightingale tells his fairy tale
Of paradise where roses grew.                     20
Though I dream in vain, in my heart it [you] [it always][there always] will remain
My stardust melody,                                 
The memory of love's refrain.

  実は、最後から3行目(第21行)のit がyou になっている歌詞を見て訳したので、以下のようになったとさ。――

そして黄昏時の薄紫の闇が
ぼくの心の草原を静かによぎる
空高くのぼる小さな星たちは
ぼくらが離れていることをいつも思い出させる
君は道をはるか遠くへさまよいゆく
ぼくに歌を残して
歌は決して果てることはない
愛はいまは昨日の星屑、
過ぎた歳月の音楽となる

ときどきぼくは不思議に思う、
なぜ歌を夢に見ながら
孤独な夜を過ごすのだろうと。
メロディーはぼくの夢想に立ち現われ、
ぼくは君とまた一緒にいる。
ぼくたちの愛の始まりのころ、キスするたびに
インスピレーションを与えられたあの頃の君と。
けれども、それは遠い昔のこと、いまぼくの慰めは
星屑のような歌のなかにある。

庭を囲む壁のよこで、星々が輝くあいだ、
君はぼくの腕の中にいる。
夜鶯が、薔薇が咲いていたパラダイスの
おとぎばなしを語る。
むなしい夢。けれど、ぼくの心のなかで君は、
ぼくの星屑の思い出メロディー、
愛のリフレインの記憶として、いつづける。

 フランク・シナトラの歌としての歌詞のページ(のひとつ) <http://www.lyricsfreak.com/f/frank+sinatra/stardust_20055401.html> は "you" としています(この手のページが怪しいのは前から感じているところですけど)> シナトラの映像を探したのですが、1943年という古いもの(chorus [refrain]部だけ)とその後の、オーケストラをバックにverseだけで3分近くもたせているもの(w)しか見つかりませんでした。聞いたものでは "it always will remain" とフランク・シナトラは歌っているみたい。ナット・キング・コール Nat "King" Cole の昔の歌唱(ヴァース付き) (3:04)を聴くと "it will remain" と歌っていました。Willie Nelson ウィリー・ネルソンおじさん(2:09)は、ヴァースは歌っていないのですけれど(2:09)、"there always will remain" と歌っているのでした。仮主語っていうやつですね。となると it も仮主語というかextra position 外置構文という、この場合だと主語が長いので、仮に代名詞を入れておいて、あとから長い主語を補う、という文法的な説明が正解ではないでしょうか。"you" は気持ち的にわかるけど、誰もそう歌ってないなあ(笑)

 ということで、即修正。

むなしい夢。けれども、ぼくの星屑の、あ、思い出じゃなかった!!、メロディー、愛のリフレインの記憶は、ぼくの心の中にいつまでも残る。

 解釈を積み上げる気持ちはいまのところないです。が、ちょっとだけ(笑)。14行目のinspiration は詩人(あるいは音楽家)にとっての創作の霊感といちおう考えます。あと、庭の壁のあとにパラダイスが出てきますけれど、paradiseというのは語源的には「壁に囲まれた」というか「まわり+壁」みたいな意味だったはずで、要するに囲われた庭がパラダイスです。しかし「私」は庭の外にいるし、薔薇は過去にパラダイスに咲いていた(grew) のでした。最後の最後のrefrain というのは歌のタイトルがstardust だし、なにやら自己言及的なにおいがしますけれど(つまり歌っている歌がそのソングというような)、それほど臭くもないので許します。へたすると自己中ロマン主義芸術家の歌になっちゃいそうなのですけれど。

  ああ、疲れた。

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カリフォルニア時間午後3時10分追記 わが美空ひばりもverse から歌っておられました。そしてit will remain でした。 "Misora Hibari - Stardust" posted by "orion2758at"

3時30分追記 上のYouTubeに導かれて違うのを見ていたら、字幕で訳詞がでているのがありました("Stardust 『スターダスト』~ 美空ひばり 【Hibari Misora】" by "KaiserPCS")。――


薄紫色の黄昏が心に忍びよる
夜空にまたたく星にあなたを想う
唄だけを残して去って行ったあなた
恋は過ぎ去りし日々の星屑

あなたを想って眠れぬ幾多の夜
私を追想の世界へ誘うあのメロディ
夢のように過ごした甘い日々
今は星屑に想いを託すだけ
星輝く夜にあなたと歩いたあの庭
バラ香る楽園の唄をさえずる鳥
今も心にあざやかに残る
想い出のスターダスト・メロディ

男の歌を女が歌う、ということにいちおうなると思います。美空ひばりの歌う英語は元のままで、たとえば "You are in my arms" と歌っているのですけど、訳されてないです(他にもはしょっているところは多いのですけど)。

 


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コメント 2

あいら

こんにちは。Stardustの解釈、興味深く読ませていただきました。
paradiseの単語にはそういう意味もあるんですね。
inspirationなど、詩人の立場になって物を見てみるというのも面白いと思いました。
歌詞サイトって意外といい加減というか、歌い手が勝手に歌詞を変えることもありますし、
耳コピーしてるだけだと、どうしてもばらつきが出ますよね。
特にアドリブが激しい人のものを参考にしてるっぽいところは信用度が低いです(^^;)
それから、ホーギーさんのもピアノ素敵ですね。

by あいら (2008-11-08 19:26) 

morichan

あいらさま、
おこしいただき、かたじけないです。
はい、ホーギーのピアノはよいです。プレイ・イット・アゲイン、ホーギー、アイ・ラヴ・ユー・ホーギー、という感じです。
"song" をよほど「曲」と考えようかと思ったのですけれど、そもそもこれはホーギーの詩ではなく、ああ、だから詩人としてMitchell Parishが書けばこうなるよな、とか、いやそもそもホーギーはつくって "Star Dust"という題を付けたときに何を考えていたんだろう、とか、わけがわからなくなりました(笑)。ヘタな気取ったボーカルが付いてるよりは曲だけのほうが良いとも思います。
ついでにもうちょっと書きますと、このverseは現在時制でずっと書かれていて、"you wandered down the lane" じゃなくて "you wander down the lane" なんですね。そしてrefrainは、夢は現在時制で、そこに夢の外の現実の私の言葉が重ねられるというかたちです(もうすこし正確に言うと逆で、夢を見て過ごしている現在の私の言葉のなかに現在時制で夢が語られる)。そして、verseの、特に「君」が道を去っていくのは、夢のシーンと重なっているんじゃないかしら、と思いました。ぐるぐるぐるぐるw
by morichan (2008-11-09 00:02) 

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