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March 13-21 マーガレット・フラーの新しい伝記を読まないなりに考えたこと Margaret Fuller: Wandering Pilgrim (2008) by Meg McGavran Murray [擬似科学周辺]

March 13, 2009 (Friday)

   この日届いた本。

MargaretFuller.jpg

Meg McGavran Murray.  Margaret Fuller: Wandering Pilgrim.  Athens: The University of Georgia Press, 2008.  xx+515pp.  $44.95 を送料と合わせて15ドルくらいで購入 ついでながら、下の箱は引っ越し用の箱です。そろそろ帰国準備なのですが、のほほんとほんはとどき。

  擬似科学のシリーズの最初にフラーの『19世紀の女性』のイラストをもってきたこともあり、なんとなくあらためて気になっているひとです。いちおー、たぶんこの伝記もどうやらそうなのですが、男性的な女性→ジェンダー・クライシス→精神的なクライシス→神秘思想への傾斜(とりわけ両性具有的な思想への関心とか)というような構図でとらえられる人なのだと思われ。

  8部構成で全65章からなる大冊です。もちろん読んでません。読んでなくても買ったらなるたけ書くw。擬似科学との関係だと、動物磁気説(メスメリズム)と骨相学です。索引からメモって今後の読書に役立てよっと――animal magnetism, 63, 105, 118, 210; defined, 106-7, 119, 158-9; in "The Great Lawsuit," 188, 195, 197, 202; MF's belief in, 106-7, 158, 186, 189, 202; in Summer on the Lakes, 208-9, 211-2.  Mesmer, Franz Anton, 189, 195; Fourier as follower of, 448n14; on harmony of spheres, 197; and Society of Harmony, 209.  mesmerism (mesmerists), 105, 106, 109, 202, 209; MF visits mesmerist, 106-7, 119, 158-9, 210.  phrenology, 105, 106, 107; Fowler brothers examine MF's head, 107.  Fowler, Orson, 89-90, 106, 107; examines MF's head, 89, 107; MF attends lectures of, 458n11; MF intrigued by, 107.

    ただ、どうも該当する章のタイトル、14 "Providence, Pain, and Escape into Illusion" (pp. 105-16), 21 "Daemonic Desires" (pp. 150-8), 22 "'The Daemon Works His Will'" (pp. 158-163) などがほのめかすように、擬似科学への傾斜をあんまり肯定的にはとらえてないようで(まあフツウそうですがw)。ただ、問題は、どっか本文で demonology 云々って書いてあるいっぽうでソクラテスのダイモーンへのフラーの関心を書いているのだけれど、デモーニッシュなものすなわち悪魔的で邪悪という偏見はフラーにはないと信じたいのですが、自分の内なるdemonとか言うとすぐに悪と結びつけるのは異教的なもので霊的な存在を「解釈」したキリスト教倫理の影響なのでしょうね。

  まったく個人的メモとして書き留めておくと、悪の存在を認めつづけたキリスト教は、しかし、悪を天国(Heaven)・神(God)・天使(angel)と反対側の地獄(Hell)・魔王(Satan)・悪魔(devil)として逆ヒエラルキー的に位置付けたわけで、人間に関与する霊的なものは善悪二元論に分離してしまうわけなのだと思われ。

  だとすると、ハードル(というのもヘンですが)がいくつもあって、まず人間の霊性の体験が教会組織を介さずには異端視された中世以降の正統思想に対して、聖霊を個人として体験するという異端的な流れがあり。けれども既にして、「聖霊」という光の側をもっぱら指向しているがゆえに、倫理的に善性が霊性と重なるところがあり。だからこそ、このあいだ〔「March 16 プレフォルストの女見霊者、2冊 The Seeress of Prevorst」参照〕のような霊=「真善美の直観」=「良心 conscience」=「聖霊」というような等式が成立してしまう。

  でもconscience というのは辞書の定義に従えば right or wrong の知覚ですから。つまり人間社会における倫理コードにあっている・あっていない、という倫理でしかない。コンシャンスって中にscience が入っておるわけですけれど、語源を考えると "privity of knowledge (with another)" (OED) というようなところなのですよね。他者と知識を内々に共有することなわけで、勝手な感じを述べれば、common sense というのも近いな(たぶん)。

  そういう人間の、いってみれば勝手な道徳と同一視されたら、霊もたまったもんじゃないと思うのですが。

  だから、そういう倫理から離れて霊的なものはどのようにあるか、みたいな問題。

  はっ。話がそれすぎ・・・・・・。

MargaretFuller_1845_asPortraitofaDistinguishedAuthoress_caricaturebySamuelE.Brown.jpg
Samuel E. Brown によるカリカチュア (1845). "Portrait of a Distinguished Authoress"

  えーと、実はこれが挿絵になった文章をポーが書いているわけですが、ポーとフラーについてはまたいずれ(またがあるのだろか)。

MargaretFuller_1848-daguerreotype.jpg
Margaret Fuller (1846) ダゲレオタイプ写真

  フラーは頭痛持ちだったのです。それでメスメリストに、というかメスメリズムにかけられる盲目の被験者に診てもらって、磁気流体の流れが阻害されている、というありがちな答えを得ます。でもそこからフラーは動物磁気説に関心を深めていく。

MargaretFuller_inItaly1848-ThomasHicks.jpg
Thomas Hicks によるイタリアのマーガレット・フラーを描く肖像画 (1848)

  他のいくつかの絵を見ると、確かにこういう顔をしていたのだな、と思われます。1810年に生まれ、超絶主義者たちと交流し、雑誌『ダイアル』の編集者になり、それからニューヨークで書評家として令名をはせ、フェミニズムの金字塔的な『19世紀の女性』を1845年に出版し、翌年には女性初の外国特派記者としてヨーロッパに行き、結婚して子供をつくるのですが、1850年、帰国の航海でニューヨークの沖まできて船の難破により一家3人とも命を落とします。遺体は見つかりませんでした。享年40。

 


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