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October9 メリーマウントのメイポール(五月柱)――ルネサンス・フェアをめぐって (中の続き)  Renaissance Fair (3) [America]

September 09, 2008 (Thursday)

September 30  ルネサンス・フェアをめぐって (中)  Renaissance Fair (2)

のつづきです。

  アメリカ文学の、古いところを知っている人がもしもいらっしゃったら、このあいだのメイフェアの記述――つまり、アメリカのルネサンス・フェアの最初が英国の春の祭りの再現であったこと――のところで、ナサニエル・ホーソーンの短篇小説を連想したであろうと思われます。ハイ、モーリちゃんの父の連想もそこにありました。

   しかし、文学作品を自分はなんのために引いてこようとしているのかしら、という疑問がムクムクと頭をもたげてしまった。(a) 現代のルネサンス・フェアが現実と非現実なりハイパーリアリティなりの混じり合いなりギャップなりおおげさにいうと齟齬みたいな感覚につながるものが仮にあるとしても、 (b) ホーソーンという作家が、植民地時代のアメリカの歴史に取材し、複数の資料を詳しく読んで、ある程度は史実に基づいた「歴史小説」を書き、短篇"The May-Pole of Merry Mount" (1836) の場合もMaypole と"m"音で頭韻を踏んでいる「メリーマウント」(陽気山)というホーソーン好みの寓意的な名前も実在だし、五月柱を倒す17世紀前半の植民地総督のエピソードも史実であるとしても、――モーリちゃんの父としてはこの件(ルネサンス・フェアの件)に関しては虚構ではなくて事実をとらえようとしているので、歴史を考えるなら歴史そのもの(まあ、それがフィクションだというのがちかごろの歴史学かも知らんが)とは言わずとも一次資料にあたるのがスジかなあと。ホーソーンの作品を読んで、実際の歴史を検証して、史実に戻るのなら、最初から史実を検証した方がいいような気もする。あれ?  キミはいったいなんで文学やってるの?  別に歴史を知りたいから文学作品読んでるわけじゃないや。ついでに言うと英語の勉強で本を読んでいるのでもないぞ。本を読むために英語の勉強してんだ。それに文学作品を根拠にして歴史をうんぬんするのは倫理的論理的になんか問題があるような気もする。

  などという大人げない煩悶的反問を自らのなかでくりかえしつつ、それでもうろおぼえでしかない作品を反芻すべくE-text を探して読みだしたわけです。そしてさらに頭が痛くなったわけです。これはひとつにはホーソーンという作家のわからなさ、曖昧さにあるのですが、結局のところ文学作品が解釈しつくされずに開かれている、そういう心地よいわからなさのゆえなのかもしれない、がそうでないかもしれない。たとえば、五月祭の女王となって、王と結婚する娘がもらす次のようなセリフ――

Therefore do I sigh amid this festive music. And besides, dear Edgar, I struggle as with a dream, and fancy that these shapes of our jovial friends are visionary, and their mirth unreal, and that we are not true Lord and Lady of the May. What is the mystery in my heart?

だから私はこのお祭りの音楽のなかでため息をもらすの。それに、ねえ、エドガー、わたしは夢の中のようにもがいていて、わたしたちの陽気な友達の姿をしたものがみんな幻で、みんなの浮かれ騒ぎは非現実じゃないかって考えが浮かんだりするの。そしてわたしたちも本当の五月王、五月妃ではないんじゃないかって。私の心の中にある謎はなんなの?

  (うまく訳せないけど)これはなんなの?  結局のところ、他の歴史的細部がどれほど正確であろうがなかろうが、こういう登場人物のせりふこそが作品を文学として織り上げているのであって、それは作家の創作に他ならんわけです。場所によっては作家の歴史解釈がコメントとなってあらわれているところもあって、それは歴史家が利用するところかもしれないけれど。

  しかし、作品は放棄して、歴史にあたろうかと思ったところで、 次のサイト、写真と注釈、が見つかってしまいました。――

maypole.jpg

"The Maypole Dance"  Women in white dresses dance around the maypole by Munger Hall.  Each holds a ribbon attached to the top of the pole.  As they go ‘round, the ribbon decorates the pole in spring colors.  Alumni photo archive: 1937 or ‘38 <http://www.bsc.edu/folklore/customary/maypole.htm>

   BSC Folklore <http://www.bsc.edu/folklore/index.htm>というサイトの一ページなのですが、BSC というのは Birmingham-Southern College (HP) という、アラバマ州の大学なのでした。上の写真は、1937年か38年に、キャンパス内のMunger Hall という校舎横で五月柱のまわりを踊る "Maypole dance" が演じられる様子を撮影したものです。そして、つぎのような説明がついております。――

Brief Commentary:

The Maypole Dance was a common rite of spring at colleges from the late nineteenth century through the 1950s. Historian David Glassberg argues that the celebration was created (or resurrected) by turn-of-the-century progressives who bemoaned America’s lack of wholesome traditions. They believed that Puritanism had severed this country’s ties to the culture of Elizabethan England—a belief supported by a reading of Hawthorne’s short story, “The May-Pole of Merrymount.” (「メイポール・ダンス」は19世紀末から1950年代まで大学の春の儀式として一般的でした。デイヴィッド・グラスバーグは、この祝典は、アメリカに伝統がないことを嘆いた世紀転換期の進歩主義者たちによって創られた(あるいは復活させられた)ものだと論じています。人々は、この国のエリザベス朝英国文化との結びつきがピューリタニズムによって断ち切られたと考えました――この考えは、ホーソーンの短篇「メリーマウントのメイポール」を読むと支持を与えられるものです。)

It is widely believed that the May Day festivities disappeared in the 1960s with the advent of the women’s rights movement, but some scholars also argue that campus traditions in general became less relevant at that time as students began to focus their attentions on the larger world beyond the college gate. Nevertheless, many colleges (particularly all-women schools) continue the tradition today.  BSC is not among them. (メイデーのお祭りは、女権論運動の勃興とともに1960年代に消失したと広く信じられていますが、研究者のなかには、学生たちが大学の門を越えた広い世界に目を向け始めた当時、一般にキャンパスのいろいろな伝統が意味を失なっていったのだ、と論じるものもいます。けれども、多くの大学(とりわけ女子大)は今日もメイデーの祝典の伝統を保っています。BSC の場合はそうではありませんが。)

  まあ、都合のいいものを拾ってきてつなぎあわせて主張するのは問題なのはわかっています。が、これはモーリちゃんの父の勝手な憶測以上の内容を含んでおるね。

  エリザベス朝英国文化=エリザベス朝ルネサンス。そのお祭りがメイ・フェア⇒ルネサンス・フェア。

  ということで、歴史的な見取り図が目の前にパッと開けてきたので、少しホーソーンの作品にも触れつつ、17世紀アメリカの植民地時代のメリーマウントの五月柱事件をいそいそと記述することにします(げんきんで笑)。  

  しかし・・・・・・BSC のページにきちんとあがっている参考文献、ちょっと目を通す必要を感じてしまいました。また出直してきます。

Bibliography

  •  
    • Beattie, Rich.  “Maypole Festivals: Dancing to Celebrate Spring.”  New York Times April 21, 2006.

    • Glassberg, David.  “Restoring a ‘Forgotten Childhood’: American Play and the Progressive Era’s Elizabethan Past.”  American Quarterly 32:4 (Autumn 1980): 351-68.

    • Griffin, Edward M.  “Dancing Around the Maypole, Ripping Up the Flag: The Merry Mount Caper and Issues in American History and Art.”  Renascence 57:3 (Spring 2005): 177-202.

    • Klein, Richard M.  “Maypoles and Earth Mothers.”  Natural History 85:5 (May 1976): 4+.

    • “May Day Celebration.”  Centennial Celebration home page.  James Madison University.  <http://www.jmu.edu/centennialcelebration/mayday.shtml>.

    • “MCH May Pageant April 28.”  News and Events home page.  Mount Holyoke College.  http://www.mtholyoke.edu/offices/comm/news/may_pageant.shtml.

    • Miller, John N.  “’The Maypole of Merry Mount’: Hawthorne’s Festive Irony.”  Studies in Short Fiction 26:2 (Spring 1989): 111-   .

    • “Spring Is in the Air at Albright—Memories of Glorious May Days.”  Albright Sesquicentennial Stories home page.  Albright College.  <http://www.albright.edu/150/mayday.html>.

    • “Traditions.”  Student Activities home page.  Bryn Mawr College.  <http://www.brynmawr.edu/activities/traditions.shtml>.

    • “Trinity Celebrates Founders’ Day.”  Media Relations home page.  Trinity University.  <http://www.trinitydc.edu/news_events/2002/founders/maypole.html>.

 

  あ、えーと、興味のある方は、余裕があればつぎのものを読んでおいてください (って誰が読むか)――

Nathaniel Hawthorne, "The May-Pole of Merry Mount" Electronic Text Center, University of Virginia Library <http://etext.lib.virginia.edu/etcbin/toccer-new2?id=HawMayp.sgm&images=images/modeng&data=/texts/english/modeng/parsed&tag=public&part=1&division=div1>

 

ここまで読んでいただいてほんとうにありがとうございます。ついでにどれでも押してもらえるとぎざうれすぃです。

 

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