November 26 メリーマウントのメイポールの挿絵について An Illustration of "The Maypole of Merry Mount" [本・読み物 reading books]
November 26, 2008 (Wednesday)
今日のベイエリアは朝と昼に雨が降るという予報で、昼ごろから降り出したようです。
りくつをつけてホーソーンの短篇「メリーマウントのメイポール」にカタをつけようと思って朝から考えたり書いたりしているのですが、まとまらないので、脱線して余談をメモリます。
このあいだの記事「November 19-20 メリーマウントのメイポール(五月柱) II――ルネサンス・フェアをめぐって (下のはじまり) Renaissance Fair (6)」でも貼り付けた上の挿画は英語のWikipedia の記事 "Merry Mount" <http://en.wikipedia.org/wiki/Merry_Mount>に付されている画像リンク <http://en.wikipedia.org/wiki/Image:MerryMountMaypole.jpg> からとりました。この "Merry Mount" は、アメリカの作曲家 Howard Hanson (1896 - 1981) が1933年に発表した同題の3幕のオペラについての記事です。ついでながら、作曲家を前提にしないで書かれたRichard Stokes によるlibretto 台本(劇詩)は、ホーソーンの短篇にゆるやかに基づくものとされていますけれど、ストークス自身がピューリタンの歴史を研究し、魔女狩りや異端の弾圧などにあらわれるピューリタニズムの負の部分を認識して書かれたもののようです。ともあれ、記事中に引かれた画像のキャプションは "Illustration to Nataniel Hawthorne's short story 'The Maypole Lovers of Merry Mount'" となっているのはもちろんまちがいで、短篇のタイトルには "Lovers" はありません。
さて、public domain に入っているこの画像は、"User" のコメントおよびSummary では "(Image taken from http://scarlet.nscc.mass.edu/mmd/media/5212/MMD1510_l.jpg)" と「ソース」があかされていました。それで、いっしょけんめい元のページの説明文を探そうとしたのですが、なかなかたどりつけないのでした。"Development Server for Hawthorne in Salem" という Hawthorne in Salem のページ<http://scarlet.nscc.mass.edu/>に、URL を短くしていっていきついたものの、Archives <http://www.hawthorneinsalem.org/Archives/Introduction.html> のなかの Images ("Images Used in the Hawthorne in Salem Website") <http://www.hawthorneinsalem.org/Archives/Images.html> には見つからず。
あきらめていたところで、別の検索で出てきた別のImages のページが"Images Related to The Short Stories of Nathaniel Hawthorne" <http://www.hawthorneinsalem.org/Life&Times/LitCareer/ShortStories/Images.html> で、そこにありました。やれやれ。
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1882年の全集版の挿絵ということはわかりました。が、それ以上の情報はないのでしょうか。つーか、わたしは欲しいのですが。
それで、古本・図書館情報にあたってみたものの、だめそうなので、Internet Archive Searchで挿絵つきのe-text をジカに見ちゃろうかという気になりました("Works of Nathaniel Hawthorne 1882" で検索)。1882年出版のものだけ並ぶわけではないことを確認したうえで、とりあえず第1巻(それは図書館情報で知っていた)というのが明確なやつのひとつ(27 MB)Flip Bookをクリック。カリフォルニア大学Los Angeles 校図書館の蔵書でした。奇遇やね。タイトルページには "Riverside Edition / THE COMPLETE WORKS OF NATHANIEL / HAWTHORNE, WITH INTRODUCTORY / NOTES BY GEORGE PARSONS / LATHROP / AND ILLUSTRATED WITH / Etchings by Blum, Church, Dielman, Gifford, Shirlaw, / and Turner / IN TWELVE VOLUMES / VOLUME I." と書かれています。しかし、
1. 15巻本じゃないや。 2. 挿絵画家多すぎ! 3. ファーストネームも書きなさい。
2.はともかく、この12巻本は、挿絵が冒頭の1枚しかないことがパラパラおどったら、いやめくったら、わかりました。それで、いちばんダウンロードも多い、(61 MB)Flip Bookをクリック。"Library of the University of California" と書かれています。奇遇やね。これは1909年て書いてあるのでいやだったのだけれど。これも冒頭に別の挿絵が1枚あるきりでした。それに画家の名前のリストもない。わーん。
と、ふとイヤーな予感が。もしかして見開きにしたときに裏側が半分白紙になってしまうイラストは抜いちゃっている? 70頁というのは短篇のテキストが始まるページでした。あらためてみれば、70と71のあいだにうっすらと細いベージュの線が。くっそー。
ということで、ディジタル化されたe-text から探りきれていません。
裸眼に戻って、挿絵を見ると、イニシャルが書き込まれています。S と W・・・・・・? Shirlaw のSかな。
Shirlaw, illustrator で検索。――出ました。AskART という、前に、ガートルード・スタインとかについて書いたときに参照したサイト。<http://www.askart.com/askart/s/walter_shirlaw/walter_shirlaw.aspx>
Walter Shirlaw (1838 - 1909) スコットランド生まれ。3歳でニューヨークに移民。12歳のときからシカゴでbank note engraver として修行を積む。
あ、なあんだ。Wikipediaにありました。 "Walter Shirlaw - Wikipedia" <http://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Shirlaw> 1868年、Chicago Academy of Design の教師に。1870年から77年にヨーロッパ滞在。ワグナーとも親交があったのでしょうか。
お札・・・・・・
via "Five Dollars: The Paper Currency Of 1896" <http://flyingmoose.org/truthfic/1896.htm>
西部や東部の風景や文物をモチーフにした版画や油絵も描いたようですが、お札画家として有名な人だったみたい。1909年スペインで逝去。
Young Girl Holding a Butterfly 蝶をもつ少女 キャンバスに油彩
Sketch Made on Indian Reservation, Montana (c1890 graphite)
そのウォルター・シャーローの1880年代の挿絵とわかったメイポール・ダンスの絵ですが、お札の女性ほどではないけれど、メイクイーンには羽根が生えてますね。蝶々の羽かしら。それから、中央のパイプを吹いている男と右のタンブリンマンの間に、ツノのあるfoolscap をかぶって道化服を着たのがメイポールの前にひとり、そしてフラフープみたいなのをもってのけぞったような女と、それに重なるような人物が描かれています。よく見えませんが。
ちなみに、ホーソーンの短篇では、冒頭で "The masques, mummeries, and festive customs, described in the text, are in accordance with the manners of the age. " と注記され、物語本体では、動物の頭をした者たち、インディアンの狩人に仮装した者、道化服の者たち("Many of this strange company wore foolscaps, and had little bells appended to their garments, tinkling with a silvery sound, responsive to the inaudible music of their gleesome spirits") と、それよりはsober な格好をした男女が、「怪物 monsters」と呼ばれているメリーマウントの植民者たち。そして五月の王と王妃は、"One was a youth in glistening apparel, with a scarf of the rainbow pattern crosswise on his breast. His right hand held a gilded staff, the ensign of high dignity among the revellers, and his left grasped the slender fingers of a fair maiden, not less gayly decorated than himself." と描写されています。あるいは、"minstrels... wandering players...mummers...rope-dancers...mountebanks and mirthmakers of every sort" と、この五月祭の参加者の様子は描写されます。
で、もちろん(a) 歴史的な精確さの問題、つまり17世紀植民地時代の様子と、ことにトマス・モートンの集団はどうだったか、というのと、(b) ホーソーンの描写がどうだったか(1620年代の様子なのか、その200年後のなにものかを含んでいるのか)、というのと、(c) どうやらとりわけ19世紀後半に新たな装いで復活したらしいメイデーの祭を知っているウォルター・シャーローの「時代」感覚、という、複雑な因子をかかえるわけですけれど、とりあえずモーリちゃんの父としては、羽根が生えているのにコロリとまいりました、という次第です。(まあ、絵自体はなんだか白土三平に望月三起也を足したような劇画タッチなのだがw)
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The Metropolitan Museum of Art - Search Results [Walter Shirlaw] <http://www.metmuseum.org/search/iquery.asp?command=text&datascope=all&attr1=Walter+Shirlaw&c=t%3A11%2F%2F%3Assl%2F%2Fsitemap+taxonomy%2F%2F%3AWorks+of+Art%3A&x=10&y=7> 〔1+12点 http://www.metmuseum.org/search/iquery.asp〕
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